SOLAR
QUEEN
アリ・カミル
役職とスペック
エンジニア見習い→エンジニア
エンジニアとしては超一流といわれるチーフのヨハン・ストッツにひけをとらない技術屋。
某マンガの「○○えもん」のように、それも出来合いのお便利グッズを取り出すのでなく、自分で作ってしまうモノづくりの達人。2巻ではその腕前をフルに発揮しました。
何をやらせても速くて確実とのこと。つまり天才型。飛翔艇の操縦なんぞはタウにはとうてい無理(笑)といったレベルだったりします。
デインの腕では持て余すヘルメットの改良も、トサカのあるトゥーイの分もちゃちゃっと作ってしまえる器用さ。
6巻では、デインのためにバグパイプを決闘の武器(?)にするというすごい発想まで飛び出す始末。物理的に改造したわけではないのですが、道具の使い方についても、かなり頭が切れると言えそうです。地球以外の惑星言語の理解能力は皆無に等しい(特にリスニングは赤点レベル)頭脳のくせして。
7巻で、悪天候の中、デインの救助のために飛翔艇を飛ばすと言い張るかれを止めるリップに、「ぶつけたら、もっとグレードアップして返してやるさ」というセリフがウソに聞こえません、この人が言うと。なんかすごい乗り物になりそうで。
でもねアリ・カミル。リップが心配してるのは、飛翔艇じゃなくてきみの身だってこと、忘れないでね。
容貌と性格
たとえばイラストかアニメにしようと思ったら、作画に困る、竜宮城のような人(絵にも描けないなんとやら)。
本編中の容貌賛辞を集めたら、本1冊ぶんくらいになりそうなほどイイオトコ記述満載。
初期シリーズではプロポーションについてはまったく言及されていないので、脚が長いと言われるデインやリップに比べて胴長短足だったらかわいいのに、と密かに期待したのですが、長身でスレンダーだそうで…(チッ)。
なのに、それがなんの役にも立っていない。だって、美人のラエルはさっさと人妻の座におさまってしまうし、トゥーイから見ればいつも不機嫌そうでとっつき悪いヤツだし、さらにバラすと、デイン以前に<女王>号に配属された女性がいたが、男所帯を嫌って辞めてしまったとのことで、つまりは女ひとり引き止めるほどの魅力もなかったらしい。
行く先々の惑星で女の子に囲まれて、もうモテモテなんて話も聞かないし。残念ながら宇宙では、美貌は無用の長物でしかありません。デインの劣等感を刺激するのが関の山ってとこでしょう。
なにしろ中身が中身。いやなツッコミ入れたり、茶化したり‥けっこう口数多いんですよね、この人。
ただ、後期シリーズでは少し変わった気もします。ちょっと朗らかにツッこんでるような、明るくなったという印象です。
デインと2歳くらいしか違わない若さだし、アリも成長してるんですね。
自分でも自覚している花のご面相は、早くも1巻から、謎の陰謀集団のサルザーの部下にヤキを入れられてボコボコにされた。…はずなのに、2巻ではきれいに戻ってる!本人の復元力が高いのか、船医のタウの手当てがよかったのか‥ついでに美容整形してるという噂もあるとかないとか。
エピソードと考察
▼ヒーロー大好き オタク族?
笑える設定ですが、作中にはその証拠が散りばめられています。
見習い生3人の会話では、探偵ものやヒーローものを引き合いに出していますし、2巻でもリップが、ドラマのヒーローもののファンだと証言してします。
そもそも本人がヒーローをやれる容姿だとデインが評しています。(連合のホームと訓練所育ちで勉強以外知らないマジメ人間だとジェリコ船長に思われてるデインも、けっこうヒーローものを観ていたらしいということが露呈)
ジュノンボーイから東映特撮ヒーローデビュールートの顔してガンプラとかホットトイズを元から作れそうな人ってことです。
▼アリとデイン
アリとデインはとても対照的です。
かたやバリバリ理系の技術屋、かたや営業職で文系。かたや自信家で口数が多い、かたやコンプレックスが強くて寡黙(。クレーター戦争で家族を失ったとはいえ、もともとはお坊ちゃん育ちのアリと、身寄りがなく施設出身のデイン。まさに正反対のタイプであることは、ジェリコ船長も把握しています。
アリはいつも優雅なしぐさで─特にときおり見せる「お辞儀」はとってもエレガントらしいですが、礼儀正しいのは実はデインのほうだったりします。
6巻で、アリやウィークスとメス・キャビンで議論していたとき、ジェリコ船長が後から入って来て、そのあと3人が退室するさい、船長に会釈するような感じで、上官にきちんと礼儀を表して去っていったのはデインでした。なんとなくしつけのよい子という印象ですね。
しつけ云々より本来の性格かもしれません。アリは若様タイプで、どっかエラそう。
他のクルーからどう思われているのかわかりませんが、周知の通り1巻ではデインにとって苦手な先輩候補生でした。しかし「ちょっかい出すのは好きだから」とはよくあるパターンです。巻を追うごとに気心が知れてきて、なんだかんだ言ってもリップと3人セットで行動している三角関係(笑)。
一見リップの方がデインと仲よさげですが、しかしアリがリップよりアドバンテージを握ってる点がひとつ。
それは肉体的…もとい、物理的な接触が多い!ということです。
1巻で負傷したアリの体を支えていたのはデイン。2巻で夢にうなされたデインの体を揺すって起こしたのがアリ。4巻で毒に侵されたデインを抱きとめていたのもアリ。そしてきわめつけは7巻の救出劇。
アリ1人でデインを助けに行ったんですからね。それはもう、アレですよ。2人きりで飛翔艇に乗って帰ってきたんだし。しかもそのあと、脚を骨折したデインのために飛翔艇のおかかえ操縦士になったアリ・カミルでした。ほかのクルーは徒歩なのに!(世が世なら薄くて高い本が出そう)
なにかとデインの言動にツッコミを入れていますが、褒めることもありますし、2巻でデインがパトロール隊員に殴られたとき、真っ先に抗議してくれたのもアリでした。冷淡なイメージが強いアリですが、実際は友情に厚いようです。
そもそも!! 腕組みして壁にもたれているという、お決まりのかっこつけポーズ以外にクールを象徴するものなんかありませんので。無駄口はたたくわ、怒りっぽいわ、ゴープ狩りのときはジャンプの目測を誤って水にはまっちゃうというカッコ悪さもお披露目してる人ですよ?
ただ、要領はいいタイプ。
4巻で犬のような動物が檻から逃げたとき、「何もしないからおいで」と、正面から呼びかけたデインを囮にしておいて、動物の背後からハンモックを網代わりにしてみごとに捕まえたのはアリです。しかもそのあと、取り押さえの最中に噛みつかれたのはデインの方で、アリは無傷。…まったく、腹の立つほどソツのない男です(ブツブツ…)。
▼知られたくない心
火星のクレーター戦争で、家も家族も友人も失くしたというアリ。けして表に出しませんが、その傷あとは深いようです。
7巻では、今も悪夢として残るその時の記憶が、psi-linkによって無意識のうちにデイン、リップ、ウィークスに伝わってしまい、それ以後、タウの指示にも従わず多量の薬を服用してまで自分のプライバシーを守ろうとしています。自分の内面、とりわけ弱い部分を知られたくない、という思いは誰にでもあるでしょうけれど、アリは特にそれが強そう。
どうせ何もかも失くしてしまうんだ--と悲観的な考えの持ち主ですが、裏を返せばそれは、もう失くしたくないという思いがあるわけで。
7巻でデインの生死がかかっているときに見せた、これまでにないアリの激しさはとても印象に残りました。皮肉屋で軽口を叩くのもかれの側面なら、仲間を思うあまり自分を責め、悪天候の中、デイン救出のため単独で飛翔艇を飛ばす--それも燃料が尽きるギリギリまで…という無鉄砲で熱い一面を持っているということが判明したのです。
7巻のアリは意外でもあり、また期待通りでもありました。
アリってホントはいい奴だってずっと思っててよかった…!反目し合っているようで、実は深い彼らの絆を確認したい方はぜひ7巻をお読みください。