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ノートン邦訳作品リスト
日本に紹介されたのは22
作品
日本で出版されたノートン女史の著書のリストを作成しました。
本国アメリカで出版された著作は300以上あるのですが、日本で邦訳されたのは、2017年に30年ぶりに刊行されたアンソロジーに収録された ”All Cats Are Gray” を加えても、22作品しかありません。かなり残念な数字です。
10作を越えるウィッチ・ワールド・シリーズのうち、トリガース一家の物語としての5作は、日本でも完結を迎えていますので、いつか<太陽の女王号>も同じように…とひそかに期待しています。
原題の後に記したのがアメリカでの刊行年度、各出版社の後に記載したのが邦訳版の発行年度です。
できるだけ米国版の年度順に沿い、また、イメージがつかみやすいように邦訳版のカバーも並べてみました。
<女王号>の松本零士氏のイラストも好評だったようですが、ノートン女史の世界を華麗に描いた武部本一郎氏のファンも多いと思います。
▼「地底のとかげ人」
(People of the Crater:1947)
SFマガジン掲載(1970)
堤 英治・訳
斉藤 和明・絵
これが最初に邦訳された作品であるということを知る人は少ないのではないでしょうか。
オランダを舞台にしたファン・ノーレスシリーズが児童図書組合選定図書となったのを契機に、執筆に専念し始めたノートン女史35歳頃の著作。
▼「銀河の果ての惑星」
(Star Rangers:1953)
ハヤカワ文庫・SF91(1973)
関口 幸男・訳
斉藤 和明・絵
アジアを越えて世界の果てまで征討を求めたローマ皇帝の物語が、この作品の取材元だそうです。のちにThe Last Planet(最後の惑星)と改題されました。
*素敵なレビューを発見したのでリンクを貼っておきます→イクシーの書庫
▼「猫の世界は灰色」
(All Cats are Gray:1953)
竹書房文庫(2017)
山田 順子・訳
旭 ハジメ・絵
猫SF傑作選「猫は宇宙で丸くなる」に収録された、ノートンには珍しい短編。<地上編>と<宇宙編>に分けられた10篇のアンソロジーで、ロバート・F・ヤングやフリッツ・ライバー、シオドア・スタージョンの短編も収録されています。英語版はwebで読むこともyoutubeで聴くこともできます。読む→Fantastic Worlds
この作品は自費出版で2016年に「猫の世界はねずみ色」というタイトルで邦訳が出ています。荒川水路編・訳「黄金期未訳SF テーマ・アンソロジー 猫の巻」(タイロス出版)。amazonからKindle版が購入可能です。こちらもあわせてどうぞ。
▼「メニエ騎士像のなぞ」
(At Sword's Point:1954)
学研少年少女サスペンス(1971)
長谷川 甲二・訳
由谷 敏明・絵
オランダ政府から賞を受けたロレンス・ファン・ノーレス・シリーズの3作目をジュブナイル向けに邦訳したものですが、しっかり大人の鑑賞に堪える内容です。
若干19歳の主人公は飛び級をした頭脳派ながら、かわいい性格です。
▼「燃える惑星 スターガード」
(Star Guard :1955)
トクマ・ノベルズ(1978)
酒匂 真理子・訳
内藤 貞夫・カバー
主人公カナ・カーは宇宙の傭兵。
挿絵は少々老けて描かれていますが(笑)、わずか18歳の少年です。そのかれが初陣において最初に命を奪ったのは…あまりにも酷だっただけに強く印象に残っています。
▼<太陽の女王号>シリーズ
「大宇宙の墓場」(Sargasso of Space :1955)
ハヤカワ文庫・SF56(1972)
小隅 黎・訳
松本 零士・絵
*2006年10月に初版とまったく変わりのない復刻版が刊行されています
「恐怖の疫病宇宙船」(Plague Ship :1956)
ハヤカワ文庫・SF89(1973)
小隅 黎・訳
松本 零士・絵
▼<タイム・エージェント>シリーズ
「不時着した円盤の謎」(The Time Traders:1958)
久保書店QTブックス23(1975)
小宮 卓・訳
武部 本一郎・カバー
「未知なる銀河航路」(Galactic Derelict:1959)
久保書店QTブックス30(1978)
吉川 純子・訳
武部 本一郎・カバー
「崩壊した銀河文明」(The Defiant Agents:1962)
久保書店QTブックス19(1974)
日夏 響・訳
角田 純男・カバー
「失われた時間の鍵」(Key Out of Time :1963)
久保書店QTブックス28(1976)
吉川 純子・訳
武部 本一郎・カバー
並べてみるとけっこうきれいなカバーのQTブックス。実は順番どおりに訳されていません。
1巻でアウトローのロス・マードックが、やや強制的に時間諜報員の任務に就かせられ、2巻(邦訳の順番としては4冊目)ではインディアンの青年が主人公になっています。
タイム・トラベル、スペースアドヴェンチャー、海洋SFというテーマの転換がなされており、ノートンの知性の豊饒さを発揮したものと評価されました。
このシリーズの続編も<女王号>と同じく、グリフィンやスミスとの共著で発表されています。
▼「スターゲイト」
(Star Gate :1958)
ハヤカワ文庫SF(1986)
小木 曽絢子 小隅 黎・訳
岡野 玲子・絵
実はこの作品だけ管理人は読んでいません。
1990年代に公開されたアメリカ映画「スターゲイト」とは無関係のようです。
▼<ホスティーン・ストーム>シリーズ
「ビーストマスター」(The Beast Master :1959)
ハヤカワ文庫SF(1986)
山田 忠・訳
石原 峻・絵
「ビーストマスター2 雷神の怒り」(Lord of the Thunder :1962)
ハヤカワ文庫SF(1987)
山田 忠・訳
石原 峻・絵
アメリカの先住民を主人公に設定したノートン作品のひとつ。
“シカゴ・トリビューン”の書評では「劇的で、論理的で、才気あふれるSF」と絶賛されているいっぽうで、邦訳版のあとがきは訳者によってかなりさんざんな評価をされているアンバランスさで、なんとも謎のシリーズです。
内容は全然ちがうのですが、米伊合作映画「ミラクルマスター7つの冒険」(1982)の原案として、ノートン女史の名があります。最下段は映画のDVDのイラストです。
▼「猫と狐と洗い熊」
(Catseye :1961)
創元推理文庫(1973)
井上 一夫・訳
金子 三蔵・カバー
主人公のトロイの容貌と動物への接し方は、デイン・ソーソンを彷彿させます。
タイトルに入っている「洗い熊」は、実はキンカジューというアライグマ科の一種ですが、
ラスカルのような洗い熊とはかなり見た目がちがいます。
▼<ウィッチ・ワールド>シリーズ
「魔法の世界エストカープ」(Witch World :1963)
創元推理文庫 (1974)
厚木 淳・訳
武部 本一郎・絵
「魔法の世界の凱歌」(Web of the Witch World:1964)
創元推理文庫 (1974)
厚木 淳・訳
武部 本一郎・絵
「魔法の世界の三兄弟」(Three against the Witch World :1965)
創元推理文庫 (1974)
榎林 哲・訳
武部 本一郎・絵
「魔法の世界の幻術」:Wiarlock of the Wicth World :1967)
創元推理文庫 (1976)
榎林 哲・訳
武部 本一郎・絵
「魔法の世界の夜明け」:(Sorceress of the Witch World :1968)
創元推理文庫 (1977)
榎林 哲・訳
武部 本一郎・絵
ノートン最大のシリーズもの<ウィッチワールド>。
リン・カーターによって「1960年代のSFの動向を決定する作品」と絶賛され、ノートン再評価の機運を促がした最良のシリーズです。
ニュータイプのSFアドヴェンチャーと呼ばれる所以は、古い「魔法」と最新の「科学力」の対決に焦点をしぼった点といわれています。
ノートンのアンチ・マシン観のあらわれとも。
管理人的にはトリガース家の三つ子がお気に入り。特に4巻のケモクに魅かれました。(シスコンだと思っててごめんね)
▼<ゼロ・ストーン>シリーズ
「ゼロ・ストーン」(The Zero Stone:1968)
ハヤカワ文庫 SF(1986)
小隅 黎 梶元 靖子・訳
加藤 雅基・絵
「ゼロ・ストーン2 未踏聖域を越えて」( Uncharted Stars:1969)
ハヤカワ文庫 SF(1987)
小隅 黎 梶元 靖子・訳
加藤 雅基・絵
宝石商マードックとミュータント猫イートの物語です(正確にいうと猫ではありませんが)。フリートレーダーや異星種族など、ほかのノートン作品とリンクしているところがあって楽しめます。
*このリストの作成にあたり、小宮卓氏の「アメリカ女SF流作家特集その1・魔法世界を預言する豊饒巫女アンドレ・ノートン」(掲載誌不明)とPIPITTO Bibliography - Sci-Fi & Fantasy「アンドレ・ノートン著作リスト」を参考にさせていただきました。