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リップ・シャノン

​役職とスペック

役職はastrogater。航路計算および操船を担う航宙士候補生から助手を経た後、疫病事件で降格されましたが、最終的に船長代行から一気にキャプテン・シャノンへと登りつめました。(船長代行は2巻でもやっていますが、あくまで非常時の自主選任だったので、公認された6巻のみカウントします)

航路計算、とくに超空間の転移座標を割り出すのはたいへんといいながら、きっちりやってのけています。パイロットとしてはジェリコ船長もウィルコックスも認める技量の持ち主で、基本的にソフトな操縦をします。

コンピューター操作の知識とテクニックは、クルーの中ではタング・ヤーに次ぐ腕前。かといってアリのようなガチガチの理系ではなく柔軟な思考と判断力を持ち、その人柄についても上官の評価は高いです。

運動能力は高く、足が速くて夜目が効きます。また、1巻から推察するに歴史に造詣が深そうです。

デインと同じく2巻で飲まされた儀式の酒と4巻の鉱石の影響で、ウィークス、アリ、デインらの4人だけに通じる”psi-link”という特殊な精神接触能力を持ちました。

​容貌と性格

1巻でアリと並んでいた時は評価されていませんが、実はハンサムで背が高く、脚が長いことは本文中に明記されています。(アリの方に気を取られてそれに気づかないデインの美的センスに大いにツッこみたい)

上官の信頼も厚く、新米クルーに対しては親切オーラ放出しまくり。デインが速攻で懐いたのはもちろん、気難しいアリでさえ、好意的に迎えてくれた先輩だと認めており、トゥーイもフレンドリーな人だと言う、誰から見てもいい兄貴です。

 

三候補生はもとより、クルーの中でも快活なのはたしかですが、後期シリーズではクルーの生命を預かるという責任感からナーバスになることもしばしば。1、2巻とはまたちがったリップの側面が見られ、それがまた魅力です。裏表のない性格ですが、だからといって腹芸ができないわけではありません。根性が曲がってないだけです(どこかのカミルくんと違って)

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​エピソードと考察

邦訳版で違う点

リップに関して一番気になるのが、邦訳版の1巻と2巻とで一人称が異なることです。
相手や場合によって使い分けがあるとはいえ、1巻ではデインに対してさえ「おれ」と「ぼく」とに散っています。2巻では、上官相手の時などは別として「おれ」に統一されています。個人的には「おれ」のイメージなんですが。

2巻でのかれの台詞が初版と2版以降とでは、邦訳文が異なっていることは周辺情報のページで述べました。

 

オリジナルのほうで気になる点はもうひとつ。
1巻ではリップのキャビンはブリッジ区画にある、つまり上の方。かたや貨物区画のデインのキャビンは船の下部にありまいた。なのに4巻では2人の部屋はどうも同じ階層にありそうな記述…と思ってたら、6巻じゃ部屋が向かい合わせ、ですと?!そりゃ部屋替えくらいあるでしょうけど、なんで受け持ちが違うもの同士がそんなにお近づきになるのかという不思議。 <女王>号名物のくじ引きできまったとか‥?

 


▼デインとリップ

そうです。デイン・ソーソンの一番の仲良しさんといえば、もうこの人に尽きるでしょう。
なにせ、<女王>号に配属が決まったとき最初に声をかけてくれた人。しかもこの新米にあれこれ船についてのデータを話してくれた。
やれ「ビー玉屋」(いつの時代?)だの「坊や」だのと子ども扱いをするアリと違って、リップがデインに呼びかけるときは“man”(きみ)で、ちゃんと一人前に扱ってくれます。そんなこんなでリンボー偵察はリップと組みたかったとデインが望むほどでした。

 

次期船長候補リップ・シャノンとしても、新米貨物係は未来の片腕。それはもう大事にしています。
4巻のデインの窮地には、一緒に来たジェリコ船長よりも早く負傷したデインのもとに駆けつけ、立ち上がるのを助けたり、携帯食料の蓋をとって手に握らせてくれるほどのお世話っぷり!6巻では自分はオフタイムなのにデインの仕事に付き合うというべたべたぶりを露呈。
そして2巻にしても7巻にしても、リップが操船を担うときには、となりの通信席には必ずデインが座る。…そんなにかわいい後輩を側に置いときたいですか?
 (英語だとデインのこと"my cargo master"とか言ってまして。このmyという所有格は英語表現としてはフツーなんですが、なんとなくニンマリしちゃいますね)

 

さらに。
psi-linkに気づいたとき、相手の状況がわかるか試してみようとするのはいいけれど、なんでそこで真っ先に思い念じるのがデインなんですか、リップ兄さん!?アリやウィークスだって同じ条件なのに、かれらじゃダメなんですか?
6巻で、デインの帰りが遅いと船長が指摘したとき、帰途についているデインのヴィジュアルをはっきり感知し「もうすぐ帰ってきますよ」と即答しちゃったリップ。この段階ではまだpsi-linkのことはオープンにしていなかったので、あわてて誤魔化してましたが、デインに関してこんなにキャッチするのが早いのは、無意識な何かがあるんじゃないか?と、つい勘ぐりたくなります。

しかし7巻中盤でデインが行方不明になったときは、アリとともにデインがまだ生きていることは感知しながらも、正確な居所まではつかめませんでした。クルーが二分され若手しかいない状況下、責任者の立場から、悪天候の中を救出に行くと言い張るアリの生命を危険に曝すわけにもいかず、苦悩するリップ。結局、みんなには内緒でアリを送り出すという決断を下しましたが…
船長代行でさえなければ、きっと真っ先に探しに飛び出したに違いありません。

 

…結果だけ見ると、アリにオイシイところもってかれたけどね…。

いや、なんのなんの!全7巻の最後の1ページまでデインと一緒にいたのはやはりリップでした。

 

というわけで、シリーズの頭からしっぽまで主人公に寄り添っていた最強の助演男優に拍手!

 


▼家 族

リップって意外と親不孝者です。

外宇宙に出るのならもう会えないのね、と、お母さんが目に涙いっぱいためてるのに、「うん、そうだね。」…なに、そのあっさりしすぎの返事!
宇宙に出られるという嬉しさしか頭になくて、ろくに別れの挨拶もしなかったようです。他にきょうだいがいても、親にとってはだいじな息子。デインもトゥーイもアリも、お母さんに送り出してもらってはいないんですよ。だってお母さんはその時はもういなかったんだもの。この3人から見れば、なんともったいないことを。

 

兄弟姉妹、おじいさんもいる家族に囲まれて、リップの幼少時代はきっとずっと幸せだったのでしょう。初期シリーズのときから、そんなイメージはありました。生まれ育ったのはどこなのか知りませんが、彼の回想の中に湖畔も出てきているので、たぶん環境はよかったのだと思います。

お母さんがどこに住んでいるのかわかりませんが、息子の乗り組んだ船の名前くらいは知っているでしょうから、疫病事件の時、当局に逮捕されたなんてニュースを聞いて、卒倒してなきゃいいですが。まったく、親に心配ばかりかけて困った息子だ、リップ・シャノン。

 

大人になった今、さすがにリップもお母さんに悪いことしたなあと反省しているようです。
ともあれ、リップのキャラクターはお母さんと家族によって育まれたもの。あの性格なくしてクルーの和は成り立ちません。
 


▼キャプテン・シャノンへの長い道のり

パイロットとしてのリップの手腕は1巻の時点でもう完成していると言ってよく、ウィルコックスや船長に並ぶと評価されています。


2巻では状況が状況だったので荒っぽい着陸になりましたが、基本的には大地をいたわるかのようなソフトな着陸ができる人です。4巻でも飛行力のない救命艇をふんわりと高台から降ろしています。また疫病事件では厳しい状況下で、船長代行として操船のみならずクルーの牽引役もつとめ上げました。

なのに‥なんでいつまでも見習い生のままなんだ、きみは!1巻に「見習い期間の最後の年」って書いてあるでしょ-が。
2巻までに1年近くは経っているはず。となると、思い当たるのは疫病事件後の10階級降等処分です。いや、あんまりでしょ、これは。見習い期間終了直前に直滑降でスタート地点に逆もどりですか?どうやったら今より下の地位に落ちられるかわからない、というデインに比べてかわいそうすぎる!
  
かれを含む4人(実はジャスパー・ウィークスも見習いになっている!)の昇進を最初に提案したのはウィルコックス。6巻で遺棄された<アリアドネ>号(のちの<ノース・スター>号)を2隻目として所有するか否かという話が持ち上がったときでした。これにはさすがにアリも反応を見せました。

 

3人の見習い生は、それぞれ上官のメソッドを受け継いでいるものの、上司のコピーではありません。性格も上官とはかなり違っています。
で、3人のうち、その師と最も対照的なタイプに見えるのが、リップでしょう。ジェリコもリップも共にリーダーとしての資質は備えていますけれど。

6巻で見習いを卒業し、続く7巻終盤でついに船長に任命されました。キャプテン・シャノンという響きに、まず、本人よりうれしそうに反応してくれたのがデインでした。
遅すぎた昇進ですが、最後の最後にやっと報われたリップ。ふだんから明るい笑顔がさらに輝きを増しそうです。
Congratulations! シャノン船長!

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